中村電池にいただく、お客様からのお問い合わせの中で、カーエアコンの仕組みなど、カーエアコンについてよく聞かれることについてまとめてみました。ご覧いただいているお客様にとって、お役に立つ情報があれば幸いです。どうぞごゆっくり覗いていってください。
カーエアコンの機能には、どういうものがあるのでしょう?
日本のカーエアコンの歴史は、主に1950年代に民間への普及が始まりました。
私たちの住む高温多湿の日本では、その快適性と便利さにより、多くの人に受け入れられて、1970年頃から装着率が急速に上昇し、現在では装着率が95%を超えるヒット商品となっています。
25年くらい前までは、高級車でも、お車購入後のエアコン後付け作業が主流でした。
現在のカーナビゲーションと同じように、新車にエアコンが最初から付いているわけではなく、オプション扱いだったのです。
私事ですが・・・
私も最後のエアコン後付け世代の一人です。1人で一日に5台位、毎日カーエアコンの取り付けをさせていただいておりました。
そんな時代もあったのですが、時は流れて、今では反対にエアコン後付け仕様のお車の方が希少となってしまいました。
現在では、ほとんどがメーカー標準装着となっております。
日本のカーエアコンは、いつ頃から出てきたのでしょうか?
カーエアコンは、車の室内の空気を冷却、除湿して快適な車内空間を創り出すように設計されており、冷房が必要な夏季だけでなく、除湿、曇り取りが必要な梅雨や冬季にも優れた機能を発揮します。
また、吸い込まれた空気は、まずクーリングユニットで冷却、除湿がなされ、続いてヒーターユニットで最適な温度に加熱されるので、吹き出し口から出てくる風は、湿度が低く、さわやかで、その時々に必要な快適な温度にすることができます。
カーエアコンは、夏の冷房だけでなく、冬でも除湿と曇り取り(デフロスター機能)の重要な役割を果たしています。
特に雪国の方は、エアコンがしっかり機能していないと、冬に車のウィンドガラスの曇りがとれず視認性が悪くなるため、しっかり機能するように整備しておくことが大切です。
空気調和って何のことでしょうか?
空気調和というのは、空気の「温度」「湿度」「清浄度」「流れ」の要素を調整して、空気を適切な状態に保つことです。
ここでのカーエアコンの空気調和というのは、乗員が快適な状態となる環境を作り出す為に、車内の「温度」「湿度」「清浄度」「流れ」の4要素を全部、または、一部を適切に調整することです。
あまり聞きなれない言葉ではないでしょうか?
自動車に装着されている空気調和のための部品には、次のようなものがあります。
- 空気の「流れ」をつくるブロワユニット
新鮮な外気を車室内に取り入れたり、車内の空気を循環させます。
また、カーエアコンの風量を調整します。
- 空気の「清浄度」をつくるエアフィルター
車室内外からの空気中のホコリなどを除去して空気をきれいにします。
- 空気の「温度(冷房)」「湿度」をつくるクーリングユニット
ブロワユニット、エアフィルターの順で流れてきた空気を冷却、除湿します。車内の冷房装置です。
- 空気の「温度(暖房)」をつくるヒーターユニット
クーリングユニットから流れてきた空気を必要分だけ加熱し、適温にします。車内の暖房装置です。
カーエアコンの分類は?
【装着位置による分類】
1.フロントエアコン
2.リヤエアコン(クーラー)
3.オーバーヘッドエアコン(クーラー)
【制御方式による分類】
4.マニュアルエアコン
5.オートエアコン
となります。
フロントエアコン
リヤエアコン(クーラー)
オーバーヘッドエアコン(クーラー)
冷房の原理は?
例えば、アルコールを皮膚に塗付すると冷たく感じたり、夏に庭やアスファルトに打ち水をすると涼しく感じたりするのは、この冷房の原理による冷房現象です。
これは、アルコールまたは水が蒸発するときに周囲から熱(潜熱と言っています)を奪うためです。
冷房装置は、蒸発しやすい液体(冷媒と言います)を装置内に封じ込めて、装置間をそれぞれ配管でつなぎ、「気化→液化→気化」を繰り返しながら循環させる装置です。
カーエアコンで用いられている方式は、蒸気圧縮式冷凍サイクル方式といいます。
この方式の冷房装置の特徴は、仕組みが簡単で、エアコンガス(冷媒)を効率よく循環することができることです。
カーエアコンの構成は?
カーエアコンの構成としては、大きく分けて
- コンプレッサー(圧縮機)
- コンデンサー(凝縮器)
- レシーバータンク(貯蔵容器)
- エキスパンションバルブ(膨張弁・絞り弁)
- エバポレーター(蒸発器)
という部品構成になります。
コンプレッサー(圧縮機)について
エバポレーターで蒸発した気体の冷媒ガスを吸入・圧縮して、コンデンサーで容易に液化するように加圧します。
コンプレッサーで圧縮されたエアコンガス(冷媒)は、高温・高圧の気体状エアコンガス(冷媒)となり、次のコンデンサーに送られます。
コンデンサー(凝縮器)について
コンプレッサーで圧縮された高温・高圧の気体状エアコンガス(冷媒)を、入口から出口までの通過中に冷却して液化させて、高温・高圧の液状エアコンガス(冷媒)に状態を変化させます。
液状となったエアコンガスは、次のレシーバータンクに送られます。
レシーバータンク(貯蔵容器)について
レシーバータンクは、コンデンサーで液化したエアコンガスを一時的に貯蔵する容器です。
カーエアコンはコンプレッサーをエンジンで駆動するため、常に回転速度が不規則で、エアコンガスの吐出量も常に一定ではありません。
また、外気温度の影響を大きく受け、特に夏場の炎天下に駐車されているときの車内温度は大変高くなるため、その熱を奪うために、大量の液状エアコンガス(冷媒)を気化させなければなりません。
このようなコンプレッサーの回転数や外気温の変化があった場合でも、その変動を調整して、安定して液状エアコンガス(冷媒)を供給できるようにすることが、レシーバータンクの大きな役割となっています。
液体となったエアコンガス(冷媒)は次のエキスパンションバルブに送られます。
エキスパンションバルブ(膨張弁・絞り弁)について
エキスパンションバルブは、クーリングユニット内にある膨張弁・絞り弁です。
簡単に言いますと、噴射量調整機能の付いた霧吹きといったところです。
レシーバータンクから送られてきた高温・高圧の液状エアコンガス(冷媒)を小さな孔から霧吹きのように噴射させることにより、低温・低圧の霧状エアコンガス(冷媒)にし、気化(蒸発)しやすいようにして、次のエバポレーターに送ります。
霧状にする目的は、この状態が最も効率よく液体が気化し易い状態だからです。
霧状となったエアコンガス(冷媒)は次のエバポレーターに送られます。
エバポレーター(蒸発器)について
エバポレーターは、クーリングユニット内にあり、エアコンガス(冷媒)を気化させてエバポレーター周囲の空気から熱と湿気を奪い、除湿された冷たい空気を作り出します。
このとき、エバポレーター内では、低温・低圧の霧状エアコンガス(冷媒)が車室内の熱を奪って急激に蒸発して、低温・低圧の気体状エアコンガス(冷媒)になります。低温・低圧の気体状エアコンガス(冷媒)は、次にコンプレッサーに戻り、この状態変化を繰り返しながら、車内をどんどん冷やしていきます。
このような構成部品の中を、ガスの状態を変化させながら、ぐるぐる回すことで熱の吸収と放出を繰り返しています。次は、エアコン冷媒ガスについてです。ご覧下さい。
よく「エアコン冷媒ガス」とは何ですか?というご質問をよくいただきます。私なりにまとめてみましたので、お時間ありましたらご覧下さい。
カーエアコンのエアコン冷媒ガスについて
カーエアコンガスのことを冷媒と呼んでいます。
冷媒は、冷凍効果を得るために、冷凍サイクル内を循環して、熱を伝える物体のことです。
カーエアコン、ルームエアコンなど現在最も多く使用されている冷凍方式が、蒸気圧縮式冷凍方式と呼ばれておりまして、大きさや使用用途など様々なものがありますが、基本的には、コンプレッサー(圧縮機)、コンデンサー(凝縮器)、エキスパンションバルブ(膨張弁)、エバポレーター(蒸発器)により構成されていて、密閉された回路(冷凍サイクル)を冷媒が循環し、室内から外気へ熱を移動させて冷却する仕組みとなっています。
この冷凍サイクルに封入する冷媒の種類を変えることで、使用目的と温度帯にあった冷凍サイクルシステムをつくっています。
例えば、カーエアコンや生魚などの生鮮食品を運ぶ冷凍車などの冷凍サイクルには、冷媒としてHFC-134aを、アイスクリームなどの冷凍食品を運ぶ冷凍車などには、冷媒としてR404Aを使用しています。
カーエアコンにHFC-134aが使用される理由は次のようなことがあげられます。
【1】 ゴムホース製冷媒配管のゴムを劣化させない。
【2】 燃えたり、爆発したりしない安全なガスである。
【3】 価格が手頃で容易に購入できる。
【4】 蒸発の潜熱が大きくて、液化し易い。
【5】 オゾン層を破壊しないので環境の保護につながる。
【6】 毒性、腐食性がないので、食物、衣服を傷めない。
【7】 カーエアコンの使用温度範囲に適している
冷媒の特性について①
カーエアコンの冷媒として使われているHFC-134aは、図のような特性を持っています。
曲線をみると、冷媒は圧縮されて圧力が高いと、高い温度まで液状ですが、圧力が低いと低い温度でも蒸発して気体となります。
カーエアコンは、この性質をうまく利用しています。
気化した冷媒を液に戻すとき、自動車の使用される環境、特に真夏の環境を考えると、40℃ある真夏の炎天下の外気で、冷媒を40℃まで冷やすというのは不可能ですが、60℃位までは冷やすことは可能です。
曲線より、HFC-134aは約1.7MPa以上の圧力をかけると60℃以上で液体になることがわかります。
実際のカーエアコンでは、コンプレッサーで気体状の冷媒を約1.7MPaまで圧縮し、約80℃まで上昇させます。次のコンデンサーの入口の温度は、約1.7MPaの80℃で、通過中に約20℃冷やされて、コンデンサー出口では、約1.7MPaの60℃となり、液状冷媒となります。
冷媒の特性について②
また、エバポレーター入口の温度は、手前のエキスパンションバルブで減圧噴射されて、約0.2MPaの0℃、通過中に約3℃温められて、エバポレーター出口では、約0.2MPaの3℃で気体状冷媒となり、次のコンプレッサーに送られて再び圧送されます。
このように冷媒は、場所により圧力と温度を巧みに変化させて、室内の熱の吸収と外気への熱の放出を繰り返して、エアコンサイクル内を循環しています。
新しいシステムも開発途中との話ですので、まだしばらくは、このシステムが続いていくのだろうと思われます。
次は、部品について少し詳しくご説明致します。
ゆっくり覗いていって下さい。